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中空構造と中心統合構造の両輪 本書は日本人の心を解明するために、その源泉である古事記を心理学的に解釈する。
アマテラスの引きこもりをイニシエーションとして捉える。アメノウズメ、サルタヒコとの
関連はとても興味深く読めた。また、スサノオのイニシエーションも説く。それに成功した
スサノオがアマテラスの座を奪うことはなく、戦いによって得た剣を献上する。
このふたりの神の関係性が日本人の心の源泉となっている。多神教であり、ゆりもどしを
そなえたバランス性。問題は捨てられたヒルコの存在である。
とても面白いのは、バブル経済についての心理学的な記述。エゴ・インフレーションか。
バブルは崩壊し、デフレへ。エゴ・デフレーションか。ひきこりか。
いまの日本人はこのイニシエートを成功させることはできるのだろうか。
新自由主義に飛びつき、経済は回復したかに見えた。しかし、われわれは格差社会を
もたらした。これは成功だろうか。
河合氏のいうように、中心統合構造は必要であろう。しかし、ことはそう簡単ではないよう
だ。われわれはいま、日本人的な心性を失おうとしてはいないだろうか。アクティング・
アウトになってしまってはいないだろうか。
日本人の心性を失わず、それを尊重し、なおかつ、新たな自我を形成していくこと。本当に
難しく思える。じっくりと容器のなかで抱えていく必要があるのではないだろうか。 哀悼 本当に惜しい人を亡くした。あんなにわかりやすく心の問題を語る方を失うとは。
この方を知ったきっかけは、放送大学の臨床心理学の講座だった。
とてもわかりやすく語る方だなぁというイメージがあった。
文化庁の長官をされたことがあるというのは、後になって知った。
自分の心の病気を治すきっかけを調べたくて図書館や書店の
「精神医学」「心理学」のコーナーを行ったり来たりして
様々な人の本を読み漁っていて、気にはなっていたが
直に手に取ったのは今年に入ってからだった。
僕自身ずっと信じていたキリスト教の一つに大変失望したのと
「日本人の心や倫理観の核になるものってなんだろう?」という疑問に
河合先生の「神話と日本人の心」という本がヒントをくれそうだったからだ。
読んでみて実際多くのことを学び、ここ数ヶ月の僕の行動に大きな影響を与えてくれた。
その一つは
神話・おとぎ話の中にある「殺す」シーンを通して
子供が比喩的に心の中で「殺す」行為をしないと
大きくなって深刻な影響を与える
極端な例では、現実に猟奇殺人を起こしてしまう若者の事件
というような考えだった。
例えば 桃太郎伝説の由来とも言われる『温羅退治』や文福茶釜のように
グロテスクともショッキングとも言える内容が含まれているのが
おとぎ話の本来の姿で、
それを子供が信頼を置いているおじいさんやおばあさんが噛み砕いて解説し
子供は心の中で比喩的に『何かを殺す』行為を行ってきた。
それが今日では 「見せてはいけない」「子供に悪影響」として
すっかり骨抜きの絵本になってしまった。
たびたび起こる猟奇殺人事件はこのことが影響しているのでは?
この本を読んで僕はそう思い
日本人の中に語り継がれてきた神話についてもっと知りたくなった。
アメリカ合衆国の大統領の名前は言えても、天皇の名前はほとんど言えない
聖書のいわゆる「聖人・義人」は知っていても、日本史の人物は戦国時代以降の人しかわからない
そんな自分に「?」「おかしいぞ」と疑問がわいてきた。
まして 「古代史の日本を知る」=軍国主義・右翼という偏見にも
なにか政治的なバイアスのかかった悪意を感じ、疑問を持つようになった。
消えた中南米の文明やヨーロッパの文化に埋もれた古代文明のように
キリスト教に征服されずに生き残った歴史のある国の民族として
自分の中の遺伝子に流れている 「核となる日本人のこころ」を知れば
「自分ってなんだろう?」という疑問になにかの光が見えそうに思えた。
神話の諸事情 古来の神話や伝説が、当時の権力者たちによって、力を誇示するために 作られ、書き換えられていった、ということは、大まかに知っていました。 神々のトライアッドに加え、著者が「中空均衡構造」と呼ぶ、 はあ〜、なるほどなぁ〜、と思わずうなずく不思議な構図。 日本神話関係の本を読むのはこれが初めてですが、心理学的な側面から現代とリンクさせて書かれたこともあってか、神話が、かなり身近なものになりました。ここまで奥深いものとは!おもしろい。 また、諸外国の神話との比較も多く取り上げられているので、 各国のカラーの違い、その美しさを発見できるのも、かなり興味深い。 ただ、自分はあまりにおぼろげにしか神話の物語を知らないので、神々の 名前が急に列挙されると、誰?これ?前にもでてきてたっけ?? なんでこんなややこしい名前やねん・・・。と、前頁に振り返ることも しばしば。(←前述された名前を覚えられてない) また、物語も論説にしたがって部分的に抜粋されていることが多いので、 抜粋部分の後の展開がどうなるのか、前後の神さんの関係って・・・。 と、結構とまどうところもありました。 (著者はちゃんと流れも述べてくださってます。が、私の知識、そして 記憶力があまりに乏しかったと思われる・・・) 本作を読む前に、先に物語形式でつづった神話の本に触れてから読むと、 なおいっそう、面白味、様々な解釈が楽しめると思います。 神話を心理学で分析 面白い! 〜「こころの処方箋」あるいは数々の育児関係の著作でも知られる臨床心理学者である河合氏が日本神話について書いた作品なのでどのような内容なのか興味があった。 河合氏の目指すものは日本神話を心理学者としての分析を行い、かつ他の文化の神話との比較も行い、最終的には現代人の課題を明らかにしていくことである。結論は著作を読んでいただきたい。 〜〜 歴史を通じて現代の課題を明らかにする手法は多いがこの本のように神話を題材としかつ心理学というふたつのユニークな視点から現代日本の課題を語っている点が本書の独自性を際立たせている。神話については特別に意識することもなかったが、本書による解説分析により何の疑問なく単純に知っていた有名な神話の深い意味が明らかになり、仕事上異文化とふれあ〜〜う機会の多い私としては日本の独自性を考える点で、個人的には大変ためになった。 神話なので日本人ならたいてい知っている素材も多く、雑学的な知識を増やすという点からも面白かった。〜 面白いです 現在私たちは、ほとんど日本の神話について教わることがありません。 しかし、神話にはわれわれの文化的性格が多く出ていて、この本を読むと、自分たちの性格に当てはまるなぁ、と思わせる特徴が沢山出てきます。 また、外国の神話とも比較され、日本の文化的共通性と独自性がわかります。 この本を読んで、私たちは自分たちについて知らな過ぎるのでは!と思いました。自分たちの文化を知ることは、外国文化の理解も助けるだけでなく、ただ外国文化に憧れるだけの現状を打破するきっかけにもなるのではないかと思います。
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