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主人公のドン・キホーテは、とても知的であり、理想を追求する崇高な精神が宿った極めて純粋な人物です。 純粋であるがゆえに騎士道という理想を追求して現実との間に軋轢が生じてしまい、周囲の人間から嘲笑されてしまいます。

しかし、逆説的ですが、その狂人的な言動を滑稽に描写することによって、ドン・キホーテの理想的とも言える純粋さに真実性の生命が吹き込まれているように思えます。 ドン・キホーテにおいて実現された純粋な精神は、宝石のように光輝き、読む者の心を捕らえては離さない魅力的な力を持っています。

ドン・キホーテと共に遍歴の旅に出るサンチョも、とても魅力的な人物です。 ドン・キホーテとは逆に、全然知的ではなく、しかも現実的な物を追求する人間でありながら、純粋な心の持ち主であるがゆえに、知らず知らずのうちにドン・キホーテと同じ境地に至ることさえあります。

二人が遍歴をして歩く時代のスペインの生活が、二人と民衆との会話を通して実に生き生きと描かれています。 スペイン語のことはわかりませんが、原文の持つ雰囲気、つまり、当時の民衆の言葉遣いやセルバンテスの言葉遊びの面白さを十分に伝えてくれている素晴らしい翻訳だと感じました。